損切りできない

とある人と話をしていた時のことなのですが、その方はとある会社の人事の方で、人が足りないから面接しているのだけど、応募してくる方が、どうにもこうにもチグハグだとのこと。もちろん会社のことなので、詳細に話してくれたわけではないのですが、例えば

能力は高そうなんだけど家庭の事情で色々制約がある

とか

やる気はあるようなんだけど、この業界は未経験だ

とか

かなりの人材だと思えるんだけど、実際に働けるのは半年先だ

とかで、なんかいい人材がドンピシャで来ないなぁとのこと。なるほど大変ですねーってことなのですが、その時、僕ごときからなんかいい求人募集のアドバイスがあるなら受けたいなんて言われたことから、これは相当の人材難なんだなぁと感じたものです。

とはいえ、それには伏線もあって、その人は、僕が10数年前に札幌という全く知らないところにわざわざやってきて仕事を探した経験があることを知っていたのです。で、その経験から何かアドバイスはないものかと聞いてきたのでした。

僕は札幌に来た当初はそりゃあコネもツテもないのだから、とにかく必死でした。民主党政権時で経済もガタガタだったので、ハローワークの求人もそりゃもう寂しいものだったし。

ところで、結果としては僕はそれまでの経験が全く役に立たない、つまりは未経験の仕事をしているのですが、そういう人ってどのくらいいるんでしょうね。

それまでの経験の一切が役に立たないというのは、実はそんなことはないのですが、でもそれは仕事が軌道に乗ってからわかるものであって、最初に飛び込んだときには、そりゃもう何もわからず毎日が必死でした。

そんな経験から言えるのは、やる気があってすぐに働けるなら、少なくとも人材としては悪くないのでは?ということで、だからそういうことを相手には言いました。

すると、そのとある方はこう言いました。

「なるほど。けど、もう少ししたら、(全てを兼ね備えた)いい人が面接してくるかもしれないから、諦めずに探してみます」

  

昨日の虎ノ門ニュースを見ていて、上記の話を思い出しました。そしてつくづく思ったのですが、

損切りできない人っているよなぁ

と。確かにいるんです。例えば

ひょっとしたら次こそ当たるかもしれないと宝くじを買う
もう少しつぎ込んだら勝てるかもしれないとパチンコ屋に通う
今からでも中国に参入したら儲かる余地があるかもしれない

一見ポジティブ思考だけど、実は諦められない現実を見れない何より「損をしたくない」のですよね。この、

損をしたくない

という思考は、僕はネガティブ思考のある種の究極だと思っています。そもそもネガティブ思考の根幹にはあるのは

自分がとことん大事

という感情で、とことん自己愛が強い究極のわがままなのです。自分が大事だからこそ自分にとって嫌なことをとことん避けたいと思うのです。だからこそ過剰にそれを意識してしまうのです。

逆に、ポジティブ思考の根幹にあるのは「結果が良ければ全てよし」という発想で、その発想ゆえに、自分自身すら相対化できる利点があります。今は大変かもしれないけど、その結果として望みが叶うならそれでいいじゃないか!というある種アバウトな発想。

僕の場合はそれまでの経験を全部捨てて違う世界に入ったことで、その時は損をしましたが、今はまあ普通に生きていけてるので、そういう意味ではポジティブですね。

虎ノ門ニュースの須田さんによると、今、何がなんでも損をしたくないということで、異常なまでに中国にしがみついている企業があるそうですが、損切りできずにそのまましがみついて、その挙句に野垂れ死してくれたらいいなぁと思います。企業のくせに損切りできないなんてのは愚の骨頂。

逆に中国という損を切り捨てた企業や人にはエールを送って応援したいです。

例えばカゴメさんとか。微力ながら、野菜ジュースを買って応援しています!

その時は損をするかもしれない、しかも大損するかもしれません。けど、「落ちるところまで落ちたのだから、あとは上がるだけ」だと思えばいいじゃないですか。

僕自身、いっときだけですがホームレスになったこともあるので、それから比べたら今の生活は楽なものです。ほんと、どん底まで落ちたら自動的に「あとは上がるだけモード」になるので、本当に楽ですよ。

というわけで、損切りの話でした。