緑風荘の思い出

いきなり緑風荘と書いても、何のことだかわからない人が多いと思います。

岩手県二戸市にある温泉旅館なのです、と書いても、だからどうした?と思われる方が圧倒的多数だと思います。

では

座敷童

と書いたらどうでしょう?

これでピンと来た方がいらっしゃるのではないでしょうか?

実はこの緑風荘、厳密には火事で焼けてしまって、元々あった旅館は全焼してしまったのですが、その全焼してしまった緑風荘のとある一室に座敷童が出るという話があったのです。

だから、それ系の話が好きな人にとっては馴染み深いというか「ああ、あの宿ね」という感じかもしれません。

そして、僕は座敷童が出ると言われている部屋の隣の部屋に泊まったことがあるので、今回はその思い出話をしたいと思います。

   

社会人となって数年。かなり前の話なので記憶は曖昧なのですが、僕が所属していた会社のとある部門は皆仲が良く、年に数回、旅行に出かけるのが恒例行事でした。幹事は持ち回りで、ちょっとこの部分の記憶はぼやけているのですが、先輩と泊まる宿の打ち合わせをしていて「座敷童!いいっすねぇ」だったのか、それとも、後から「座敷童の出る宿に決めたよ!」「マジスカ!」だったのかはわかりません。いずれにしても泊まる宿を緑風荘に決めたのです。

元々は何かの偶然で先輩が座敷童の話を聞いたことがきっかけだったと思います。

さて、いざ場所を決めて予約の電話をすると「座敷童のでる部屋は予約がいっぱいで数年待ちです」と言われたようで、じゃあできるだけ近くの部屋にして欲しいと頼んだところ「隣の部屋は空いてますよ!」とのこと。とはいえ、僕が当時所属していた部門は総勢8名なので一部屋では足りず。女性職員もいたために3部屋予約することになったのですが、座敷童の出る部屋の隣の部屋以外は、ちょっと離れた部屋となってしまったのです。

当日。

「へー、ここが座敷童の出る旅館かぁ」
「雰囲気あるねー」
「せめてその部屋をさ、見るだけでも見たいよね」

などということで旅館に聞いてみたら、宿泊者のご好意で座敷童の出る部屋を見学することができました。なので僕もその部屋を見たはずなのですが、

全く覚えていません

何故か僕は全く覚えてないのです。それどころか、温泉に入ったことも覚えてないし、食事も忘れました。何ということだろう。せっかくの座敷童なのに。

その代わりといっては何ですが、僕が割と覚えているのは、みんなで一部屋に集まって宴会してる場面ですね。

今はどうなのかわかりませんが、その時は、というか、その会社のその部門では、こういう場合は無礼講。だからみんなで飲んで食べて騒いでました。部長が得意のハゲ話をして、僕が新人の頃にその頭にゲロしてしまったという定番話もあったりして、いつもの如く大盛り上がり。そのうちに一人の女性の姿が見えなくなり、あれ?と思って離れている部屋に行くと、先輩とベッドで(二人とも服は着てましたよ)イチャイチャ。

おー、なんだお前も来たのか?

という感じでまたそこで飲みながら、ここでは書けないすごいセリフをお互いに言い合ってる女性と先輩。そしてそれを見てチャチャを入れる僕。

何じゃこりゃ?

と書いてて思うのですが、少なくとも昔は、どこ(の会社)であってもこんな感じじゃなかったのかな?当時はセクハラとかいう概念もなかったし、今なら敬遠される性の話も「艶話」とでも言いますか、実におおらかでした。馬鹿話をしながらも一線は超えないという「品」もありました。

触っているようで触ってないし、エッチな話で女性陣も困ってない。

お互いに品よく艶っぽいことを楽しんでいたというか。そのうちもう一人の女性もやってきて「あら、3人で楽しんでたの?」「おじゃまだったかしら」「〇〇さんは人妻だからだめっす!」「何でー」

一応は決まってましたが、実は部屋割りなんてどうでもよく、要は飲んで騒いであとは勝手に寝てくれ状態。今の時勢とは違ってほんとにおおらかな女性陣だったので、その夜は結局みんなで適当に雑魚寝。空いてる布団やベッドに勝手に入って勝手に寝てくれ状態。

だから後日

「〇〇さんずっと■■ちゃんと一緒にベッドにいたでしょ?何時までいたの?」
「いやぁ知らんなぁ。気づいたら自分の部屋で寝てたよー」

とかいったそれなりの色っぽい話もありました。

     

話がすっかり逸れてしまいました。エロ話をしたくてこの記事書いたわけじゃなかった。というわけで、実はここからが一番僕がよく覚えている話なのですが、緑風荘を後にして後日。

確か話の導入は僕だったと思うのですが、

「そういえば緑風荘って座敷童が出るって話だったけど、誰か見ました?」

と休憩時間に話を振ったのです。するととある先輩。

「実は俺…」その先輩は座敷童が出る部屋の隣の部屋で寝てたのです。

「みんな寝た後で寝れなくなって起きてたんだよね」
「するとさ、こう、なんていうのかな。白い玉のようなものがスーッとこう流れていくんだよ」
「白い玉?」
「そう。これくらい(野球ボールくらい)の球がさ、こうスーッと流れていくのよ」
「マジですか!」

今ならそれは「オーブ」と呼ばれる、比較的心霊スポットによく出る現象だとわかっていますが、当時は

「それって火の玉すか?」

という認識。謎の発光現象は全部火の玉扱いだったのですね。だから

「おいおい座敷童じゃなくてお化け見たんじゃないか?」

なんてことで盛り上がりました。ちなみにその先輩は後日かなりの美人と結婚して今でも仲良く暮らしています。

結局、座敷童は誰も見ませんでした。けど、楽しい思い出話は残りました。今は緑風荘は新しくなってるそうですが、新しいところにも座敷童はいるのかな?いればいいですね。座敷童は見れば幸せになれるのです。

なら、見ないよりも見た方がいいし、いないよりもいた方がいいですよね。

にしても、座敷童見ておきたかったなぁ。

なんて今しみじみ思ったり。いや今でもそれなりに幸せですが。笑