中世の絵はなぜ下手なのか?

こういう動画があるのがさすがはYouTubeという感じですね!

とても面白いので、よければ皆さんもご覧ください。後編もあります。

僕は中世ヨーロッパの歴史がすごく好き(でも住めと言われたら全力でお断りしますが)なのですが、だから当然中世の絵も大好きなのです。

いやむしろ中世の絵が好きすぎて、それが高じて中世ヨーロッパの歴史そのものにのめり込んでいった口。なので、元々は中世の絵から始まったのでした。

ではなぜ中世の絵が好きになってしまったのかというと、それはユング(C.G.ユング)の著作を片っ端から読んだからです。

ユングの著作を読んでいると、もうとにかく中世の絵だらけ。そしてさまざまな注釈がついていて、その注釈がもう本当に刺激的でした。

例えば「心理学と錬金術」という大著にはこんなような絵がたくさん出てきます。

引用する際には出典を明記することが大事なので、もしダメなら削除しますということで、以下引用

図54 三匹の蛇と一匹の蛇とを手にするヘルマプロディトス。下にいるのは三つの頭を持つメルクリウスの龍。『哲学者のバラ園』(1593年)より 心理学と錬金術 上巻159頁

なんのこっちゃか全くわけわからん!

とか思うのですが、ユングはこのような絵を引き合いに出しながら、人間の心がどのような経過を辿って(発達して)いくのかを解き明かしていくのです。

この謎だらけのような絵にそんな意味があるなんて!

まだ若かった僕は、すっかり虜となったのでした。

 

中世の絵が下手な理由は上記動画で実に素晴らしく確信をついた解説がされているので、そちらを見ていただくとして、僕はちょっと違う視点から述べてみたいと思います。

確かに中世の絵は「リアル万能」ではなく「物語を見せる」ことに重点を置いているので、1枚というか一つの絵に「物語として重要なものを全部てんこ盛り」故にリアルさをどうしても排除せざるを得なかったのですが、僕は実は中世の絵は

漫画そのもの

だと思っているのです。漫画って表現手法が多彩で、時には物理法則も無視するし、感情表現が多彩だし、コマの大きさにも情報が盛り込まれているし、人物の目は総じてでかいし(特に女性)、何より絵が作者によってバラバラですよね。とてもじゃないけど下手としか思えない絵でも、めっちゃ売れている作家さんだってたくさんいます。

では、下手な作家さんのその漫画は無価値なのかと言えば、涙をながすほどの大感動を味わえたりしますよね。それはなぜかというと、

「感動させるような情報が詰まっている」

から。そして中世の絵とはまさにそういうものなのだと僕は思っています。中世の絵はギリシャ美術に代表されるような写実信仰を捨てたのです。その代わりに「作者の、あるいは制作依頼者の求める情報をてんこ盛り」したのです。

  

というわけで、僕はリアルな絵画よりも中世の絵が大好きです。

逆に言うなら、僕はルネサンス絵画には実はあまり興味がありません。身も蓋もない書き方をするなら、

リアルを絵で追求するより写真1枚撮った方がいい

のでは?と僕は真剣に思っています。技法はあくまでも技法。もちろん素晴らしいに違いないのですが、そうまでして何を表現したいのか?と思うと、もっと手っ取り早い表現法でもよくね?というのが本音。

絵でしかできない表現法があって、中世の絵はまさにその表現方法に目覚めたのです。実は中世の絵の方が表現方法としてはまさにルネサンスだったと僕は考えています。

誰だって、リアルな絵を描きたい。

その証拠に古代から延々と今日に至るまでリアル表現は受け継がれてきました。今の漫画の絵の密度たるや!極限までのリアル思考に基づいてるかのように、とにかく緻密な線だらけです。そしてそうであるなら当然、古代のヨーロッパにおいてもできるだけリアルに!と思っていたのは、当時の絵画が示しています。しかしそれがいきなり中世の「暗黒期」と呼ばれるヨーロッパになった途端に

「そんなのどーでもいい!」

と開き直ったというか、絵でしか表現できないことがある!となったのではないでしょうか?事情があったこととはいえ、絵はただ見るものではなく、そこにさまざまな情報を詰め込んで伝えるための手段となったのです。たくさん詰め込みたかったから、絵そのものはあれこれ破綻してますが、それゆえにたくさんの情報を詰め込むことができるようになったのです。

そんな中世の絵に僕はものすごく魅了されてます。

過去には好きすぎてネットであれこれ見て周り、随分と英語の勉強にもなりました。僕と同じような趣味の人が田舎にはおらず(当然だし、今だってそんなにいないでしょう)英語圏の人ならいるのでは?とそりゃもう真剣に探したものです。

そんな僕なので、上記の動画にはいたく感動しました。

こういう動画がどんどん見たいです。あとはヨーロッパの図書館巡りがしたい!笑