犬神家の一族

市川崑の作品の中では文句なしの最高傑作ではないでしょうか?

少なくとも僕の中では日本映画の中でも最高傑作の一つだと思っています。

何から何まで素晴らしい!

何より高峰三枝子さんの、これぞ演技という、まさに圧巻の演技には本気で泣いてしまいました。

我が子を思う愛の深さ、業の深さが、まさに心に突き刺さるほどに伝わってきました。時代背景もあります。戦場から帰ってくるであろう我が子を待つ気持ちというのは、いかばかりであったのだろうかと思わずにはいられません。そういえば岸壁の母という歌謡曲もありました。

金田一耕助役は色々好みはあるでしょうけど、僕はやはり石坂浩二さんが適役だと思います。古谷一行さんはちょっと苦手ですね。なんか男臭すぎる感じがして。石坂浩二さんのちょっとなよっとしている感じの演技がいいなぁと思ってます。他にも色々な役者のかたが演じていますが、やはり時代背景にあった演技は、今の役者には荷が重すぎるのではないかな。良くも悪くも今は平和な時代で、死が隣り合わせという過酷な時代とは違う。そういうものはやはりどうしても色こく出てしまうのではないでしょうか。

逆を言うなら、例えば高峰三枝子さんに今風の演技は無理でしょう。どうしても背負ってる時代の分だけ重くなってしまう。

さて、身も蓋もない話をするなら、実はこの犬神家の一族。佐清がしっかりした性格なら、そもそも起こることのなかった事件でした。最初から佐清と珠世は愛し合っていたのだし、普通に戦場から帰ってきてたら、確かに周りは揉めるでしょうけど、殺人が起こることはなく、遺言通りに財産は二人のもので、とりあえず安泰だったのです。

さっさと帰ってこいよと。

  

横溝作品は、実は小説に目覚めるきっかけとなったもので、手に入るものは全て読みました。個人的には八つ墓村と悪霊島が最も好きなのですが、犬神家の一族も素晴らしいですね。実は三つ首塔もかなり好きです。(僕の思う)当時の風俗の雰囲気が最も色濃く出ている感じがいいのです。あと、三つ首塔はかなりエロチックです。

そもそも横溝正史さんはものすごく濃厚なエロスを書ける作家だと僕は思っています。例えば八つ墓村の典子なんて、その典型。映画やドラマでは存在そのものがなかったことにされてしまっていて大ショックなのですが(だから映画やドラマは僕の中ではかなりの低評価)その健気さは、美人ではあるけど冷酷な森美也子との対比も合間って実にエロチックに表現されています。愛ゆえに美人になっていくなんて、実に色っぽいじゃないですか。

  

遺産相続は大抵揉めるし、その中で醜い争いもあって、だからこそ物語になる。僕はある意味では、人が醜い姿を表すのは仕方のないことだと思います。大金が転がり込んでくるかもしれないというのに泰然自若としていられるのはよっぽどの人ではないと無理じゃないでしょうか?

僕だったらこの通りの小物なので、きっとあたふたして、でも悪いことはしたくないし、けど大金は欲しいしで、かなりセコイ、そして怪しげな行動をするんじゃないかな。

そんなにほしくはないんだけどね。一応権利だしね。権利の分だけは貰ってもいいんだけどね

とかなんとか。

そう考えると、金持ちは金持ちなりに大変だなぁって他人事ですが、そう思ったり。

  

いやでもやっぱりお金は欲しいです。笑

揉めたくないというだけで。