昨晩会いましょう
松任谷由美(以下敬称略)はある時期までは正真正銘の100年に一人レベルの大天才だったと思います。過去形です。僕が勝手に言ってるだけです。
ある時期まで、とは具体的にはいつまでかというと「昨晩会いましょう」発売時までです。
僕はこの「昨晩会いましょう」が松任谷由美の最高傑作だと思っているのです。
もちろん偉そうに、後のは全部駄作(キリッ)などと言うつもりはありません。あくまでも僕の基準でもって、そう考えているにすぎません。みなさんにはみなさんの考えがあると思います。僕にも僕の考えがあり、基準がある。ただのそれだけです。
では、僕の基準とは何か?ですが、これは僕には簡単だけど、説明するとなると実に難しいです。無理やり一言で言うなら
昭和の空気感
って感じでしょうか?あるいは
アンニュイ感
とでも言いましょうか。未成熟ゆえの大器晩成感とでも言いましょうか。
ほらもう訳がわからない。僕には分かっているのですが、説明するとなるとやはり難しいですね。「なんとも言えない感情を掘り起こされる感じ」ってのが一番しっくりするかもしれません。しかもそれは「もう2度とリアルタイムでは味わえない」ものなのです。
「昨晩会いましょう」以降、バブリーな時代の松任谷由美は、いい意味での金儲け主義だったと思います。いい意味でと書いた通り、しっかり儲けを計算して作った曲だと思うし、そうやって曲を作れるのはすごい才能です。その才能が欲しいと思うのは僕だけではないはず。時代に乗れるのは素晴らしい才能です。多くの人が望んでも手に入れることができない希有の才能です。
「昨晩会いましょう」には、その才能がまだ見えないと僕は思います。音楽の能力のみ、天性の才能のみで作った感じ(ここに引っかかる人がいるのはわかってますよ。これはあくまでも僕の感想です)がします。
その才能と儲ける才能をバランスよく配合したのが、「昨晩会いましょう」以降の松任谷由美。
才能だけで突っ走っていた天才ではなく、才能を「上手に使う才女」になったのが「昨晩会いましょう」以降の松任谷由美なのだと。
だから「昨晩会いましょう」以降は、その圧倒的な天才感が薄れるのは仕方ないことなのです。