子供たちは森に消えた

旧ソ連といえば、僕はすぐにゴーリキーパーク(映画)を思い出すのですが、あれは全然生優しいというか、こういう書き方はなんですが、「ちょっと不思議な世界」というか、当時は共産圏の国々の情報は本当に乏しかったのです。だから、旧ソ連というのは、当時の僕には「未知の世界」「ちょっとしたワンダーランド」だったのです。やっぱり適切な書き方ではないな。

共産主義も左翼もサヨクも大嫌いで、共産思想は地球上に出現したもっとも醜く歪んだインチキ思想だと考えている僕ですが、若い頃は「そんなインチキ思想に侵された国に住む人は、独裁者の圧政に苦しむかわいそうな人々」だと考えていました。ちなみに今は違います。人がその国の制度を作る。わかりやすく言うなら

中国共産党=中国人

ですね。おそらくは中国共産党が消滅したら、第2の中国共産党が出てくる。今の僕はそう確信しているのですが、当時の旧ソ連も、今のロシアも実は変わってないと思います。プーチンは「今風の独裁者」なのです。

なぜ、こんなことをいきなり書いたかと言うと、実はこれが以降において最も大事なことだと思うから。

  

子供たちは森に消えた
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読後感がこれほど悪い本はなかなかありませんが、一部を除き、出てくる人物がまさに「共産主義の醜さ」を表していると僕は思いました。逆に言うなら、こういう人物が「共産主義を作るのだ」とも言えます。

人というのは環境が作る部分は実はそれほど大きいわけではなく、持って生まれた資質が大きいのだという話を読んだことがあります。環境はそれほど影響しない。とするならば、なぜ特定地域に共産主義が興るのかの説明が簡単につきます。つまり「最初からそういう土壌(人)がある(いる)から」だと。

だからこそ僕は中国共産党=中国人だと確信しているのですが、当時のソ連もやっぱりそうだったのだと思います。その中にあって「まとも」な人が生きていくとしたら、どれだけ大変な目にあうのか。それが「子供たちは森に消えた」で書かれていることだと僕は思います。

逆に言うなら、異常な世界で異常者が生きていくのは「比較的簡単なこと」でもあるのですが。

アンドレイ・チカチーロは性的欠陥(ボッキ不能)を抱え、そのことがことさらに攻撃的な人格を生み出すこととなった稀代の殺人者です。こんな殺人鬼が数年どころか10年近くも野放しになっていたのだから、これが日本ならどうだっただろうかと思わずにはいられないのですが、旧ソ連では「なぜかのんびりムード」に思えるのは、作者のある種の意図なのか、それとも本当にそうだったのか。

悪魔ばりの恐ろしい顔で笑うチカチーロの有名な写真を見つつ、その犯行のあまりの残酷さに一切の同情すらできず、本当に読後感の悪さばかりが残るノンフィクション。それが「子供たちは森に消えた」です。

  

よく、真実が知りたいなどとしたり顔で言う人がいますが、僕はそういうのは「綺麗事」でしかないと思っています。自分の知的好奇心を満足させるための方便、オナニーですね。知ろうが知るまいが、そこで事件は起きて、多くの人が死んでるのです。犯人の心情を理解したところでどうにかなるわけでもありませんし、異常な人間の異常な心理を知ったところでそれは抑止には「繋がりません」。

それまでは、僕も「真実が知りたい」と考えるような乙女チックな人間でした。しかし、この本以降、真実を知ることは単なるオナニーでしかないと確信しています。オナニーのために犯罪者を生かしておくべきではないと思っています。

何が起きたかを知ることは大事なことだし、捜査官の犯罪捜査には役立つでしょうが、僕らは犯人の心情や生い立ちを知っても知らないくてもどうでもいいことです。まあせいぜい本になって、知的好奇心がくすぐられる程度。

実際に殺された方はたまったものではない!

というわけで、この本以降、あまりこの種の本を読まなくなりました。そういう意味でも記憶に残る1冊です。僕はあえてこの本は勧めません。

異常な人間はどう取り繕っても異常。

たったこれだけのことが書かれているのみなので。